木春堂(目白)
- 小松めぐみ
- 2018年4月4日
- 読了時間: 3分
更新日:2018年8月23日
東京都文京区関口2-10-8 ホテル椿山荘東京 ガーデン ☎︎03-3943-5489(レストラン予約)
営業時間11:30~14:30LO(土日祝15:00LO)、17:00~20:00 無休
予算:昼 石焼ランチ¥5,500〜、夜 石焼会席¥11,000〜
https://hotel-chinzanso-tokyo.jp/restaurant/mokushundo/
*2015年「週刊新潮」20号掲載

蛍観賞とともに愉しむ
ホテル椿山荘東京「名物料理」
都心から蛍の姿が見えなくなって久しいが、ここは別世界。東京・目白の「ホテル椿山荘東京」である。
毎年初夏になると、約2万坪の庭園内で蛍を観賞できるとともに、6カ所のレストランで蛍にちなんだ特別プランが登場する。2015年は5月20日から6月30日までということで、さっそく足を運んだ。
日本料理、蕎麦、イタリアンなどの6店舗から選んだのは、ホテルの名物「茶釜料理」を味わえる石焼会席の「木春堂」。創業時から伝わる茶釜に希少な椿油を入れ、魚介や肉、野菜をオイルフォンデュのように揚げるという。
期待に胸を膨らませながら、1万5000円の「茶釜料理コース」を注文すると、1品目の前菜5種が登場した。丸い卵黄を蛍に見立てた「卵黄の味噌漬け」や「ホタルイカの香草和え」など、季節感が溢れている。
2品目の「本日のお造り」は、黒ムツとマグロのお造り。次は、いよいよ「茶釜料理」の番である。仲居さんが茶釜と椿模様の五徳(釜を支える土台)とともに、具材を盛った大皿を運んできた。伊勢海老と鯛の姿盛りなどの他に、何やら灯籠のようなものが飾られている。
「冬瓜の皮に穴をあけ、中に蝋燭を入れています。これも蛍にちなんだ演出のひとつなんですよ」
と、仲居さん。言われてみれば確かに、小さな穴から見える灯が、蛍の光のようではないか。
さて、オイルフォンデュの準備が整うと、仲居さんが鯛の切り身の串刺しを茶釜に入れ、四角く畳んだナフキンで蓋をし、揚がる頃合いを見計らって取り分けてくれた。サクッとしたあられに包まれた鯛は、旨味が凝縮している。
続いて帆立、和牛のつくねを射込んだ椎茸、ブルーチーズを巻いた春巻き、豚肉で巻いたエリンギとアスパラ、黒毛和牛サーロインといった具材が次々に揚げられていくのだが、どれも食感が軽くて胃もたれしない。店名の焼き印をつけた芋の五郎島金時は、甘くてホクホクだ。
「椿油に多く含まれるオレイン酸が胃酸の分泌をコントロールしてくれるので、胃もたれや胸やけを起こしにくく、口当たりも良いかと思います」
と、料理長の長谷川善健氏も自負する。
名物料理を堪能した後は、サラダ、茶碗蒸し(内容は季節によって替わる)、〆の炊き込みご飯とデザートをお腹に納め、大いに満足。だが、愉しみはまだ終わらない。
期間中、木春堂の利用客だけに蛍の特別観賞室が設けられているのだ。
「店の隣に設置した室内ビオトープ(生物空間)で、蛍の飛翔を間近で観賞していただけます。室温や湿度に配慮して植物を配置し、蛍の飛翔環境を整えているんですよ。もちろん庭園内を歩きながらでも、ご観賞いただけます」(広報担当者)
ホテルの名物料理とともに愉しむ風物詩、いとおかし――。
*茶釜料理は2日前迄に要予約
©MEGUMI KOMATSU
Comments