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根津雙柿庵(根津)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年6月12日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都文京区根津2-28-8   ☎03-3827-6117

営業時間:昼(日曜のみ)12:30〜13:30最終入店、夜(火、水、金、土)17:00〜19:30最終入店 定休日:月曜、木曜 予算:昼¥6,480〜、夜¥9,180〜

https://blog.goo.ne.jp/soushian117

*2016年「週刊新潮」41号掲載



客の来店時刻に合わせて仕込む

完全予約制「蕎麦コース」


 食欲の秋は、「ひやおろし」の季節。冬に搾られた新酒が夏を越えて熟成し、秋に卸されるのだ。

 旬の日本酒をそば前料理と共に楽しむべく、完全予約制のそば店「根津雙柿庵(ねづそうしあん)」訪れた。9180円のコースが、実に酒呑みの心をくすぐる。

「私自身もお酒が好きでして。つまみはたくさんある方が嬉しいものですからね」

 と語るのは、澁田剛氏(53)。立川の名店「無庵」で修業し、2000年に西多摩郡日の出町で「雙柿庵」を開く。茨城県の契約農家の常陸秋そばを石臼で手挽きして打つそば名人だ。15年2月に、根津に移転した。

 昭和の下町の雰囲気が残る路地の一軒家の暖簾をくぐると、店内はカウンター5席とテーブル1卓。お酒は様々な食前酒の他、各地から選ばれた季節の日本酒がこの日は7種類あり、そのうち2種類がひやおろしだ。

 ふわふわの「蕎麦掻き」の風味を塩で味わったら、次は青柚子を練り込んだ炙り味噌。日本酒のためにあるようなアテで、3品目の「酒肴盛り合わせ」も然り。2段重の中には金目鯛の煮こごりや焼物、炊き合わせ、銀杏など、彩り豊かな一口サイズの酒肴がびっしりと詰められ、お酒が進むこと必至だ。そこで福島県の「大七純米生酛ひやおろし」と「豊久仁ひやおろし」を順番に飲むと、どちらも豊潤だが、前者は後味にキレがあり、後者は柔らかな印象。ひとしきり満喫したところで、4品目は温蕎麦だ。お椀の中のそばは3〜4口分で、糸のように細く柔らか。口中でふわりとほどけると、その香りと薄味の出汁の風味が相まって、身も心も温まる。

「この料理では、そばは脇役で、出汁が主役。出汁には鰹節を利かせたかけつゆを使っています。出汁は少し残しておいて、燗酒と一緒に飲んでも合いますよ」

 と勧められて燗酒をチビチビ楽しんでいると、名物の「蕎麦寿司」が2カン登場。海苔巻状ではなく、押し寿司のように魚がのっていることからして珍しいが、ネタの金目鯛とノドグロは目を見張るほどの分厚さ。食せば、軽くしめた魚の旨みとそばの風味が意外にも好相性だ。

「初めて作ったのは10年以上前ですが、どんどん魚が分厚くなってきました。台の蕎麦に力強い風味があるので、魚を分厚く切っても負けないんです。時間が経つと固くなってしまうのでご来店時刻に合わせて仕込んでいまして、そのためにも完全予約制にしています」

 続いて国産の天然鰻の飯蒸しと、ほんのり甘い出汁巻玉子を味わったら、締めは細切りの十割そば。ほどよいコシのある繊細なそばを手繰れば、挽きぐるみのそばの穏やかな香りが立つ。

「うちの契約農家の蕎麦畑は、今ちょうどそばの花が咲く頃。12月中旬以降には新そばでお迎えできるかと思います」

 ひやおろしの次には、新そばの季節がやって来る。


©MEGUMI KOMATSU

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