top of page

江戸前鮨 英(赤坂)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年6月1日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都港区赤坂9-1-7 赤坂レジデンシャルホテル102   ☎03-3478-1010

営業時間17:00〜22:00   定休日:土曜 予算:にぎり¥8,640〜、コース¥16,200〜

http://akasaka-hanabusa.com

*2016年「週刊新潮」23号掲載



 桧の一枚板のカウンター内で鮨を握る中島英樹氏は、文化年間から続く江戸前鮨の老舗「柳橋美家古鮨本店」で20年以上も修業を積んだ御仁。2015年3月に開業した「江戸前鮨 英(はなぶさ)」で提供するのも、正統派の江戸前鮨だ。

「シャリは赤酢と塩だけで味付けし、魚介は煮たり締めたりと、必ず仕事をします。握りは8カンと巻物で8640円、おまかせコースはこれにおつまみ4品とお刺身の盛り合わせがついて1万6200円。いかがしましょう?」

 おまかせコースを注文すると、おつまみは酢締めのアジを射込んだ白瓜や桜海老のゼリー寄せなど、季節感溢れるものばかり。日本酒を合わせるならば、大将のおすすめは大関の樽酒だ。

「樽酒は口の中をさっぱりさせる作用もある。鮨に一番合うと思うんです」

 たしかに杉樽の清々しい香りとまろやかな味わいは、マグロやアジなど、味の濃いお刺身にもよく合う。

 続いて登場したのは、ネギを浮かべたお吸い物だ。

「ウチでは握りの前に口を落ち着かせていただくため、その日の魚の中骨やアラで作ったお吸い物をお出しします。味付けは、塩とお酒と、香りづけの醤油だけ。魚の下ごしらえさえきちんとすれば、ショウガを使わなくても臭みが出ず、美味しくできるんですよ」

 雑味のない澄んだ旨みが胃の腑に沁み込み、握りへの期待が高まったところへ登場するのが、マグロの中トロ。ほどよい脂と旨みが赤酢のシャリと共にほどけて、絶妙である。

「マグロはネタの要。酸味が強いものや鉄分の多いものなど、いろんなマグロがありますが、私は酸味よりコクがあるものが好みなので、築地で吟味して仕入れます。一方、江戸前のネタは千葉の富津から館山にかけても良いものがとれるので、産直で仕入れるものもあります。内房は波が穏やかなので、脂がのった魚がとれるんですよ」

 たとえばこの日は、小肌とキスが千葉からの直送品。

脂ののった小肌は、思わず頬が弛む味わいだ。

「今日の小肌は皮が柔らかくて、いいですよ。こんな良いネタが手に入っていい仕込みができた時が、鮨屋として一番うれしいですね。青魚は塩の締め加減でおいしさが決まるので、脂のノリ具合や気候に合わせて調整しています」

 他方、甘酢で締めたキスは、あっさりとして柔らかく、海老のおぼろがキスの甘味を引き立てる。

「キスはなぜか扱う鮨屋が少ないですが、昔は鮨ネタの定番だったんです」

 伝統を継承する傍ら、いろいろな握りを食べたいというお客のためにシャリを小さくするなど、現代人の嗜好に合わせることも厭わない。とはいえ、

「江戸前の握りはマグロに始まり、鉄火で終わる。ここは譲れません」

 中落ちをたっぷり巻き込んだ太い鉄火巻でシメれば、気分は江戸っ子である。


©MEGUMI KOMATSU

Comments


SUBSCRIBE VIA EMAIL

© 2023 by Salt & Pepper. Proudly created with Wix.com

bottom of page