浅草今半 国際通り本店(浅草)
- 小松めぐみ
- 2018年3月31日
- 読了時間: 3分
更新日:2018年8月23日
東京都台東区西浅草2-17-4
☎︎03-3841-1114
営業時間11:30〜20:30LO 無休
予算:すきやき御膳¥6,000〜 http://www.asakusaimahan.co.jp/kokusai
2015年「週刊新潮」14号掲載

東京・浅草は国際通りの公園六区交差点に建つ「浅草今半」。6階建ての堂々たるビルの暖簾をくぐると、割下と牛肉の甘い匂いが鼻孔をくすぐり、食欲をそそる。それは上質な和牛特有の、甘い香りである。
「初代の髙岡伴太郎が明治28年に牛めし屋として創業した当初から、うちで扱っているのは最高級の黒毛和牛です。6年前に神戸牛取扱指定店の認定を受けてからは毎月1度、姫路の競りに出かけて一頭買いしているんですよ。最高の牛を仕入れるためには、等級が高いだけでなく、大きすぎず、脂の質感にざらつきがない牛を選ぶことが大切です。血統も吟味する必要があるので、私が生産者に直接会っているんです」
熱い思いを語る高岡博也取締役(46)は、かつて職人のもとで「骨抜き」の勉強もしたという牛肉の目利き。そんな高岡氏が買い付ける神戸牛のチャンピオン牛を使った「神戸牛御膳」(1万8000円)は、3年前に登場して以来、食通の常連に大好評の品だ。
これを注文すると、先付(鱒と筍の桜ジュレがけ)、前菜(ホタルイカと菜の花の酢味噌和えなど)に続き、和服姿の仲居さんがすき焼きを準備してくれた。丸い大皿に放射状に盛られた神戸牛肉ロースは、鮮紅色の肉にきめ細かくサシが入った霜降り肉。南部鉄のすき焼きの鍋は、鈍い銀色に輝いている。
「当店では若手(職人)が牛脂で鍋を磨き上げておりますので、お肉を焼く前に牛脂をひくことはせず、割下だけを熱してサッと焼きます。割下をたくさん使うとお肉の旨味がスープに流れてしまうので、少ない割下で焼くのが特徴です」
割下がフツフツと沸く鍋に広げられた一枚目の肉は、縁の色が変わるとすぐに裏返され、火が入ったら取り皿へ。溶き卵に付け、柔らかな肉を噛めば、濃厚な赤身の旨味が広がる。脂は想像以上にさっぱり。2枚目が焼けるのを待ち遠しく思いながら鍋を見ると、仲居さんが白滝や野菜、丁字麩などを足していた。
「丁字麩は京都から取り寄せたものです。お肉と野菜の旨味を吸って美味しくなりますので、こちらも最後に是非お召し上がり下さい」
割下の泡が大きくなってきたところに追加された2枚目の肉は、野菜の旨味が入った割下で焼かれるため、1枚目よりも甘い。丁字麩を口に入れると、割下の旨味が溢れ出た。
肉は6枚(130g)食したことになるが、脂がしつこくないせいか、お代わりしたくなるのは、さすが神戸牛のチャンピオン。
「空の鍋を見てください。残っている割下に脂が浮いていないでしょう? 脂の質がよいと、割下と分離して浮くことがないのです」
という高岡氏の言葉に、納得するばかりだ。
創業120年を迎える今月からは、「老舗の看板に甘んずることなく新しいことにチャレンジしたい」と語る小川昌樹総料理長が考案した、牛肉づくしの前菜(50食限定、3500円)も登場する。黒毛和牛の炙り寿司や昆布巻き、生ハム、味噌煮などで、和牛の魅力を満喫したい。
©MEGUMI KOMATSU
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