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石かわ(神楽坂)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2019年4月8日
  • 読了時間: 3分

更新日:2019年4月29日

東京都新宿区神楽坂5-37 高村ビル1F

☎︎03-5225-0173 営17:30〜24:00

定休日/日曜日、祝日 コース予算:¥29,000(税別)前後 



初心を忘れず貪欲に切磋琢磨

独自路線を確立した巨匠の16年


 神楽坂は毘沙門天の裏でミシュランガイド東京の3ツ星を11年連続保持する「石かわ」は、近年最も勢いのある日本料理店の一軒。店主の石川秀樹氏(54)との会話も楽しめるカウンター(7席)や個室(4室)の予約を取るのは至難の技だが、それでも訪れたくなるのは料理に独特の魅力が秘められているためだ。

「他店と違うことをしなければ、無名の料理人は注目してもらえないでしょう? だから開業した当初は、当たり前のことだけやってもダメだと思ってやってきました。今もその時の気持ちで、料理はどんどん進化させていますので、どうぞ楽しんでいって下さい」

 そう語る石川氏のおまかせコースは、約11品で2万9000円前後(税別)。先付の次には揚物が出る構成で、この春はすりおろした蕪の餡をかけた「蛤と菜の花」に続き、熱々の「白魚の俵揚げと空豆」が出されている。多くの人が最初に注文するビールと揚物は、もちろん抜群の相性。ひと昔前なら揚物の出番はコースの終盤と決まっていたが、こうして序盤に楽しむと食欲が刺激され、気分も弾む。

 3品目は、ふっくらと香ばしく焼かれた白子入りの「すっぽん出汁の沢煮椀」。すっぽん出汁の切れの良い旨味とトラフグの焼き白子のまろやかな美味、千切り野菜の繊細な香りをひと口ごとに楽しめるお椀は、最初のひと口から最後まで迫力の味わいだ。奇を衒わず、伝統に縛られないそのスタンスについて尋ねると、

「“今までありそうでなかった料理”をやりたいと思っているんです。既存の形式にとらわれずにやっていきたいと思っています」

 と石川氏。

 コースの中盤では豊後水道の鯛のお造りや蝦夷バフンウニ、透き通った白海老の飯蒸し、茹でたての温かさが残る松葉蟹など、新鮮な魚介を生かした品々がお酒を呼び、肩の力が解けてすっかり愉快に。

 続いて登場する焼物、煮物、肉、強肴には、さりげなくパンチの利いた旨味や香りがあって現代的だ。例えば初春の甘鯛には菜の花、仲春のノドグロには三浦の朝穫れキャベツなど、焼魚には旬の野菜の炭火焼を添えるのが「石かわ」流。昔ながらの焼魚のあしらいは甘いハジカミだが、代わりに甘みのある野菜を使ってバランスを取っているそうだ。

強肴にはしばしば肉が使われ、現在使われているのは野生の猪肉。白味噌仕立てのお椀の主役となった猪の脂はさらりと溶けて甘く、至福の境地に誘われる。

 最近は肉を使う日本料理店も増えたが、「石かわ」は先駆け的存在。強肴で肉を使わない日の〆には、「牛しゃぶご飯」が出ることもある。炊きたてのご飯の熱で黒毛和牛の薄切りに火を通すこの品は、生まれて間もないヒット作。新しい常連を着実に増やしている。


©MEGUMI KOMATSU

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