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祇をん ほそわり(銀座)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年3月27日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都中央区銀座8-5-18 B1  

☎︎03-6228-5822    

営業時間17:30~22:00LO

定休日:日曜、祝日 要予約 

予算¥25,000前後  http://www.hosowari.com

*2015年「週刊新潮」10号掲載



銀座の隠れ家で味わう

近江牛処女牛の鉄板焼


 夜の蝶たちが華やかに舞う東京・銀座8丁目。高級クラブが寄り合うビルの1階から、地下に続く階段を下りると、黒い重厚な扉が待ち受けている。

その横に掛かっているのは、「祇をん ほそわり」とだけ書かれた木製の看板。初めて訪れた人は、よもやここが通に人気の鉄板焼店とは思うまい。

「“一見さんお断り”というわけではないのですが、わざと隠れ家のような雰囲気にしてます。やはり気に入ってくれはった人にリピートしてもらうのが、一番。僕が生まれ育った京都では、どこの店も常連さんを大切にしはりますから」

 そう語る店主の細割栄一氏(48)は、祇園で13年間営業した同店を2009年に畳むと、銀座に出店。以来、東京では珍しい「近江牛」を味わえる店として評判を博している。

「近江牛は神戸、松坂と並ぶ三大和牛のひとつで、主に関西で消費されます。僕は17歳から30歳まで修行したステーキ店で近江牛の美味しさを知ったのですが、中でも、子どもを産んでいない処女牛の肉質の柔らかさは格別。当店では、その処女牛だけを使ってます」 

 しかも、ただの処女牛ではない。

「昔から付き合いのある滋賀県の精肉店で、骨付きの枝肉を熟成させてもろうてるんです。毎週、必ず足を運んで、その熟成具合を見て、触って、確かめる。表面に青カビが生える頃が良いとも言いますが、僕は臭いが気になるので、僕は“青カビが生える一歩手前”と決めてます」 

 細割氏の話に、カウンターの隣のカップルもうなずいている。

さて、同店の料理は、ハンバーグとステーキを楽しめる「お任せコース」のみで、予算は飲み物代込みで2万5000円前後。

 コースがスタートすると、お通し、汲み上げ湯葉、大根と赤コンニャクの煮物に続き、レア気味に焼かれたハンバーグが登場した。箸で切って持つと、しなるほど柔らかく、上質な和牛特有の甘味に、甘辛いソースがよく合う。

「ハンバーグに使うてる肉は、ステーキ用のヒレやロースの端肉をミンチにしたもの。お出しできるのは毎日、先着10名ぐらいで、150㌘(1個)を2人前に分けてお出しします。ソースの材料は、飴色に炒めたタマネギとマッシュルーム、トマトだけで、3日がかりでつくってます」

 そしてコーンスープ、氷室で甘く熟成させたキタアカリ(じゃがいも)のホイル焼き、サラダが来たら、いよいよステーキだ。

 店主がカウンター中央の鉄板で、120㌘の肉を数秒ごとに裏返しながら、大量のニンニクスライスとともに焼いていく。その加減は絶妙で、ニンニクよりも柔らかく、脂はさっと溶け、赤身の旨みが広がる。

「肉の状態によってベストな焼き加減が変わってくるので、目利きができるようになるには、何十年もかかりますねん」

 やわらかな京都弁を聞きつつ、〆の近江牛スジ肉のカレーを味わえば、まるで祇園にいるよう。再び夜の銀座に降り立った時には、旅から戻ったような気分になっているのだった。



©MEGUMI KOMATSU

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