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紀風(恵比寿)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年3月26日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都渋谷区恵比寿1-31-10 ターレル恵比寿1F  ☎︎03-5422-7792

営業時間11:30~13:30LO、18:00~21:00LO   不定休 コース予算:夜¥15,000~(税別)

http://www.ebisu-kihuu.com   

*2015年「週刊新潮」9号掲載



若き「探究者」が開いた

ミシュラン新星「日本料理店」


 東京・恵比寿駅の西口から徒歩約10分。住宅街のゆるやかな坂に面した扉を開けると、白木と珪藻土を用いた和風空間が現れる。

 ここ「紀風」は、2014年4月に開業するや、2015年版の「ミシュランガイド東京」で1ツ星を獲得した、話題の日本料理店である。

 訪れたのが2月の某日とあって、店内の床の間飾りは、福豆に「立春大吉」の札がのった節分仕様。晴れやかな気分でカウンター席に座ると、その脇に日本酒の一升瓶がずらりと並ぶ。

「当店のコンセプトは『料理と酒』なんです」

 そう言って微笑む店主の城田澄風氏(37)に勧められ、秋田・新政酒造の生酒を注文した。料理はおまかせ9品のコースが1万円、1万5000円と2種類あるが、今回いただくのは1万円のもの。

 先付けの「このわた茶碗蒸し」の塩気が、酒によく合う。続く「八寸」は、大豆の煮物、赤なまこ、稲荷寿司、鰯の梅煮といった、伝統的な節分料理だ。器には柊の葉が添えられている。

「当店は季節にちなんだ八寸も特徴でして、2月のテーマは節分。『鬼退治』の大豆は、山椒と昆布と人参とともに、じゃこダシで煮ました。鰯や柊は『鬼除け』、赤なまこは『鬼に金棒』の『金棒』の象徴として、昔から節分の料理に使われているんですよ。3月は桃の節句にちなんだ蛤の酒蒸し、青柳のヌタ、三色団子などを出す予定です」

 料理から垣間見える城田氏の探究心には、意外なルーツがあった。

「実は、料理の世界に入る前は、大学で考古学を学んでいたんです。飲食店でのアルバイトがきっかけで天ぷら屋に就職し、料理人を志すようになりました。日本料理を選んだのは、自分の国の料理を深く知りたいと思ったから。たとえば、八寸のテーマとしている節句は、自然の動きを伝えるもので、それを取り入れたのが茶道、そこから生まれたのが懐石料理です。本質を知らなければ表現することもできないので、修業時代は裏千家の茶道教室にも通いました」

 そして昨年、10年で独立するという目標を達成し、同店を開業。「物事のはじめ」を意味する「紀」に、自身の名前から「風」を取り、「紀風」と名付けたという。

 さて、料理の方は、3品目が「雲丹しんじょうのお椀」で、次に「お造り」が登場した。天然真鯛やアオリイカの味もさることながら、桐箱からネタを取り出し、目の前で切りつけるライブ感も贅沢だ。

 さらに、「鰆の幽庵焼き」「酢の物」「炊き合わせ」と続く。「炊き合わせ」はウズラの挽肉を包んだ里芋饅頭を揚げ、焼いた新筍を添えた一品で、新筍の甘さといったら、トウモロコシのよう。

「新筍は鮮度がいいと、こういう香りがします」

 コースの〆は土鍋で炊きたてのじゃこご飯。デザートの菜の花のアイスクリームを食べながら、城田氏に今後の抱負を伺った。

「4月5日で1周年を迎えますが、従業員とともに気を引き締めながら、全体を底上げしたいですね」

 探究者の挑戦は、始まったばかり。


©MEGUMI KOMATSU


(2018年8月追記)

現在コースは¥15000〜(税別)

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