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荒木町たつや(四谷三丁目)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年8月5日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都新宿区荒木町10 タウンコートナナウミ1F    ☎03-6709-8087

営業時間 17:30~22:00最終入店 

定休日:水曜、祝日 ※日曜不定休

予算:¥10,000~

*2018年2月7日発売「週刊新潮」6号掲載


「生産者の思いを伝えたい」と語る

気鋭の料理人の“志”と“味”


「荒木町たつや」は、2017年11月にオープンしたばかりながら、早くも1カ月以上先まで予約で満席の日本料理店。店主の石山竜也氏(41)は神楽坂の3ツ星日本料理店「石かわ」を経て、姉妹店「蓮」で8年間も料理長を務めた、知る人ぞ知る料理人だ。

 満を持して開業した現在の目標は、“生産者の思いを伝える媒介者”。実は石山氏、独立前から全国の生産者を訪ね歩いていたそうだ。 

「ただ料理を提供するだけでなく、生産者の思いも伝えることができれば、楽しみが深まるのではないかと思いまして。食材だけでなくお酒の生産者も訪ねており、山梨のワイナリーでは5年前からブドウの剪定・収穫も手伝っています。もう趣味ですがね(笑)」

 そんな石山氏は少量生産のレアなお酒を入手する機会にも恵まれるそうで、ある日のお薦めスパークリングワイン「2015エチュードルバイヤート」は山梨県産の希少品。ふくよかな果実味と酸味を持ち、先付の「菜の花と車海老の白味噌あん」に寄り添うような味わいが非凡なワインだ。

 おまかせコースは、先付からデザートまで約8品で7500円(税サ別)。内容は食材の旬と共に少しずつ変化してゆくが、2品目はどんなお酒にも合う揚物だ。たとえば2月初旬は、揚げたてのかき揚げが2種。「蓮根と淡路の鯛」は新鮮な鯛の旨みが鮮烈で、「芹の根とゴボウ」は野菜の香りと食感が魅力的である。

 3品目は、端正な趣の「甘鯛の沢煮椀」。香り高い吸地と種の取り合わせを堪能すると、続いて福岡産の鰆とアオリイカの刺身が登場し、魚介の純粋な旨みが日本酒を呼ぶ。そこで飲物のメニューを開けば、書かれている銘柄は「而今(じこん)」「鍋島」など4つだけ。どれも石山氏が惚れ込んだ蔵の銘柄で、実際は各銘柄に生酒や濁り酒などのバリエーションがあるため、30種類以上揃えているとか。お薦めを半合ずつ楽しむような左党には「ノドグロの肝と平目の肝」など、メニュー外の贅沢な酒肴が振る舞われることも稀でなく、杯が進むこと必至。

「日本酒は米の味、食材はそのもの本来の味がするものが好き」

 という言葉に、うなずくばかりだ。

 コースの後半には、魚介の質のよさに唸らされる品々が登場。例えば「鰤と筍の煮物」は、澄んだ煮汁の雑味のない旨みが、鰤の鮮度を物語る一品だ。

「今日の鰤は刺身でも十分なクオリティですが、刺身には鰆を使いたかったので、鰤は煮物にしました。魚は常時3種類用意して寝かせながら使い、その日の状態を見た上で、刺身にするか煮物にするかを決めています。生産者の顔を知っているだけに、食材を無駄にできないんですよ」

 日々変化する状態と向き合う石山氏の料理には、食材への敬意が溢れ、心に深く染み入るのだった。



©MEGUMI KOMATSU



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