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菊谷別亭(大塚)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年7月17日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月22日

東京都豊島区北大塚1-34-10  

☎03-3918-3462(手打そば菊谷巣鴨本店)  

営業時間13:00〜14:30、18:30〜21:00    定休日:月曜(祝日と4のつく日は営業、翌火曜日に振替)  コース予算:昼夜共¥5,000(税別)〜 

*2017年9月13日発売「週刊新潮」36号掲載



人気そば店の姉妹店で楽しむ

11品の酒肴と4種の利きそばコース


 巣鴨の人気店「手打そば菊谷巣鴨本店」が2017年2月に開業した「菊谷 大塚別亭」は、完全予約制の小さなそば店。大塚と巣鴨庚申塚を結ぶ折戸通りに面した扉を開けると6席のカウンターが現れ、奥には1卓のテーブル席と座敷もある。

 鯉口シャツに眼鏡の店主、菊谷修氏(42)は、大手ゼネコン勤務を経て蕎麦屋を開業した異色の経歴の持ち主。会社員時代に趣味が高じて秩父でそばを栽培するようになり、退職後、秩父の名店「こいけ」(2016年閉店)で修業したという。

「2005年に石神井公園で開業した当時は玄そば(殻付きのそばの実)の殻を剥いた“丸抜き”を使用していたのですが、2011年に巣鴨に移転してからは2階の倉庫兼作業場で玄そばを保管・熟成し、自家製粉しています。お客様と距離が近い店をやりたくて始めた別亭は、5000円(税別)のコースのみ。日本酒は70種類以上、ワインやクラフトビールもございます」

 日本酒は5勺単位で注文できるとあって色々試したくなるが、まずは店主定番の栃木の銘酒「四季桜佳撰」から。好みのお猪口を選んで乾杯し、最初の「そば味噌」を舐めれば、甘味噌が溶け、カリッとしたそばの実が現れる。そばの実は煎りたてとあり、ナッツのような香ばしさだ。

「そば味噌は本店でもお出ししていますが、別亭では提供する直前に味噌とそばの実を和えています」

 完全予約制だからこその細部へのこだわりは、後に登場する天ぷらにも顕著。専門店のように揚げたてを1種ずつ出す天ぷらの海老は、船上で瞬間冷凍したパプアニューギニア産の天然物で、プリッとした身の甘みが繊細だ。野菜の天ぷらも香りがよく、白い衣はサクッと軽い。揚げ油は知る人ぞ知る、関根油店の玉締め絞りの胡麻油だとか。

「低圧力で搾った胡麻を手漉き和紙で2日間かけて濾過した油で、生産量は国産の胡麻油のわずか1%未満。本店ではこれに一番搾りの菜種油をブレンドしていますが、別亭ではこの油を100%使用しています。この油だから私でも美味しい天ぷらを揚げられるんです」

 と菊谷氏が謙遜する隣で、

「原価が問題ですけどね」

 と微笑む割烹着姿の女将との掛け合いも心地よく、

「会津の馬刺し」「牡蠣のオイル漬け」などをつまみに、お酒が進む。〆のそばへ移る前に登場する、ふんわりした「そばがき」は、そばの爽やかな風味に目が覚める一品だ。菊谷氏いわく、

「2階に保管している玄そばの中からセンサーで緑の粒だけを選別して使っているのですが、粒が緑のものはタンパク質が酸化していないから爽やかなんですよ」

 コースの最後の蕎麦は、栃木、新潟、長崎など、産地や熟成年数の異なるそば4種が順に登場する趣向。産地によって異なる甘みや野趣を「利きそば」できるのは、この別亭ならではの楽しみである。


©MEGUMI KOMATSU


*予約は2日前までに巣鴨本店「手打そば菊谷本店」にて受付(完全予約制) 

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