赤星とくまがい(麻布十番)
- 小松めぐみ
- 2018年5月22日
- 読了時間: 3分
更新日:2018年8月23日
東京都港区麻布十番3-3-9 COMS AZABUJYUBAN 7F ☎︎03-6459-4589
営業時間18:00〜翌2:00 定休日:日曜 コース¥6,500〜 http://akakuma-sake.com
*2016年「週刊新潮」16号掲載

照明を落とした空間に桧のハイカウンターとテーブル席、個室を設けた店内は、漢字を取り入れた欧米人好みのインテリアだ。2015年7月、麻布十番にオープンした日本酒ダイニングだ。
「日本酒は今、世界で大ブーム。ニューヨークではステーキハウスでも日本酒を置いているほど」
そう語る赤星慶太氏(42)は、ニューヨークで16年間、ニューヨークで16年間、日本酒のインポーターやソムリエとして活躍した。
「いくらアメリカで好調でも、日本酒は日本で呑まれなくなったら廃れていってしまう。もっと日本で日本酒の美味しさを伝えていきたいと、帰国して店を開いたいんです」
一風変わった店名は、在米中に知り合った共同経営者の熊谷道弘シェフ(42)の名字を合わせたものだ。
「ニューヨークの店は『酔後知楽』というのですが、誰も名前を覚えてくれなかったので」
日本酒の品揃えは220銘柄。どんな料理にも合わせられるようにするためだ。
コース料理に合わせて6種類の日本酒を出す3500円のペアリングコースを注文すると、まずは会津若松の甘口微発泡酒「ぷちぷち」と「桜海老と三ツ葉のかき揚げ」が登場した。酒と桜海老の甘味が合い、炭酸によってかき揚げの油がスッキリ切れる。
「料理に日本酒を合わせる時に考慮するポイントは、その酒に含まれる『酸』の種類です。日本でも一般的ではありませんが、実は酸にはいくつもの種類があり、これが味を特徴づけるのです」
日本酒は醸造の方法の違いよって生じる酸の種類も異なるのだという。
「たとえば乳酸はヨーグルトのようなまろやかな酸味、クエン酸はレモンのような強い酸味、アミノ酸は旨みがあります。こうした酸の特徴が料理との相性の決め手となるので、私は220銘柄の日本酒をすべて酸の種類で覚えています。たとえば『ぷちぷち』の酸の種類は乳酸ですが、乳酸がかき揚げの桜海老の甘味とマッチするので合わせました」
2杯目は栃木の純米吟醸生原酒「姿」で、料理はこれに合わせて熊谷シェフが考えた「いちごと水牛モッツァレラチーズのバルサミコ和え」。赤星氏いわく、
「『姿』はイチゴのような香りがある。酸の種類は乳酸とアミノ酸で、どちらも含むチーズとは、当然相性がいい。また乳酸とアミノ酸はどちらもバルサミコ酢の酢酸と相性が良いのです。日本酒に含まれるアミノ酸の量は、ワインの1.5倍。ワインよりも料理の旨みを引き出す力が強いんですよ」
あたかも理科の実験だ。
3品目の刺身には福井の純米酒「花垣」、「仔羊のロースト」は、岐阜の無濾過生原酒「射美(いび)」。6品目のミニ丼には福島の純米大吟醸「亀の尾」の燗酒。食後の柚子酒まで進むと、酒量は2合半に及ぶ。
「今後はシュークリームに日本酒を合わせるなど、もっと斬新なことをしたい」
と聞けば、再訪を誓わずにいられない。
©MEGUMI KOMATSU
Comentarios