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趙楊(新橋)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年3月30日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都港区新橋1-5-5 グランベルグランベル銀座ビル2,7F  ☎︎03-3289-2006

営業時間 17:30〜21:00LO(土・祝~20:00LO) 定休日:日曜 

コース予算:¥22,000〜 

*2015年「週刊新潮」13号掲載



中国「迎賓館」元料理長の激辛「麻婆豆腐」


 国賓も訪れる中国四川省の迎賓館「金牛賓館」に、かつて「天才」と評される料理人がいた。若干25歳で料理長に抜擢された彼は、その2年後の1988年、四川大学に留学していた日本人女性との結婚を機に来日。94年に東京・八王子で、自身の名を冠した中国料理店を開業する。その名も「趙楊」――。

 現在は新橋駅から徒歩1分の新築ビル7階に、店がある。4卓のテーブル席と2部屋の個室からなる小ぢんまりとした佇まいで、その日は街を見渡せるテーブル席に案内された。

「八王子で開業してから新橋、銀座と移転を重ね、昨秋に再びこちらへ戻ってきました。以前より規模を縮小した分、仕込みに手間をかけられるようになったので、今後はもっと『金牛賓館』の料理を出していきたいですね」  

 と、オーナーシェフの趙楊氏(54)。

「『金牛賓館』では、国内外の要人を完璧な料理でもてなすために、若手は必ず半年間の特別授業を受けて技を磨きます。私も随分、鍛えられ、料理長時代には金日成主席やブッシュ大統領(第41代)をもてなしました」

 1万2000円のおまかせコースを注文すると、さっそく2品めから「金牛賓館」の高級薬膳「スッポンのスープ」が登場した。

 澄んだスープが五臓六腑に染み渡り、キノコは湯葉のように薄くなめらか。朝鮮人参には独特の苦味がなく、上品で清々しい香りすら漂う。

「スッポンは琵琶湖の天然物で、朝鮮人参は2種類を白酒と蜂蜜でそれぞれ蒸しています。キノコは四川省でしか採れないキヌガサタケの“卵”で、朝鮮人参の効能を高めてくれる。父が漢方の医者だったこともあり、子どもの頃から漢方食材を研究していたんですよ」

 次の3品めは、四川料理特有の「麻辣味」が活きる「水煮牛肉」。

「これは私の得意料理で、唐辛子や花椒(中国山椒)などを油で熱して香りを引き出し、スープ、野菜、牛肉を加えて煮ます。今日はマイルドに仕上げましたが、もっと辛くすることもできますよ」

 真っ赤な煮汁に浸かった牛肉を箸で口に運ぶと、まず花椒の香りと痺れ味(麻味)、続いて唐辛子の辛味(辣味)が広がる。牛肉の旨味や野菜の甘味、豆板醤のコクといった素材の味がギリギリ認識できるかどうかの辛さである。

 続いて4品めは、四川省特産のトリュフとキウイが香り高い「イカの塩味炒め」。これでいったん口を休めたら、最後は名物の「陳麻婆豆腐」だ。「陳麻婆豆腐」は豆豉(とうち)の深い旨味が特徴的だが、花椒と唐辛子による「麻辣味」は、前述の「水煮牛肉」を遥かに上回る。食べるほどに上顎と舌がビリビリ痺れ、ついには塩っぱくなった。耐えられずに水を飲めば、甘く感じるほど。

「花椒は、まろやかな辛さの赤花椒と刺激の強い青花椒の2種類を使っています。どちらも『金牛賓館』から取り寄せた最高級品なんですよ」

 国家元首も痺れた「陳麻婆豆腐」の奥深い刺激。


©MEGUMI KOMATSU


(2018年8月追記)

現在コースは¥22,000〜(税別)です

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