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連香(白金高輪)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年5月14日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月25日

東京都港区白金4-1-7   ☎︎03-5422-7373

営業時間18:30〜21:00LO 不定休 おまかせコース¥5,000   要予約

*2016年「週刊新潮」8号掲載



 中国には皇帝だけが食べることを許される、特別な筍料理がある。筍の生えている土の上で焚火をして蒸し焼きにするのだが、根が死んでしまうため、翌年からは取れなくなるという。

 この禁断の料理に着想を得た個性的な一品からコースが始まるのは、2015年末に東京・白金にオープンした中国料理店「連香」である。

「土の中で蒸すのは、筍の新鮮な美味しさを最も活かす調理法。当店では、これに近い効果を出すために、獲れたての筍を皮付きのまま揚げ、旨味を閉じ込めているんですよ」

とは、店主の小山内耕也氏(40)。

「味付けには、『回族』という中国のイスラム系少数民族が好む、クミンやフェンネルといったスパイスを使っています」 

 中国料理にしては珍しい味付けだが、何でも小山内氏、中国・南東西部の内陸で食される「田舎料理」を追求しているという。

「縁あって江西省郊外の田舎で修業することになり、その地の料理の素朴さに惹かれたんです。中国料理は北京なら小麦、上海なら川魚、広東なら海鮮と、その地方の特産品を使いますが、田舎料理は野菜。開業に先立ち、改めて雲南省や湖北省を訪れ、珍しい食材を調達してきました」

 例えば、2品目の「西双版納サラダ(シーサンパンナサラダ)」は、一節にタイ人のルーツとされる雲南省の少数民族「ダイ族」の自治州で出会ったもの。

「細いもやしを茹で、ミントの葉、タイ料理に欠かせないコブミカンの葉とともに和えました。中国人は生野菜を食べませんが、ダイ族は例外なんです」

 中国料理のイメージを覆すような、さっぱりとした味わいだ。

続く「湖北オムレツ」に使われている「百花菜」なる漬物も、興味深い。「百花菜」という細い水菜のような野菜を乳酸で発酵させたもので、ほのかな旨味がある。

「ぷりぷりの海老を入れたオムレツに、これを刻みあわせることで、塩の代わりにしています」

 優しい味付けが田舎の素朴さを思わせるが、この店が優しいのは、これだけではない。

料理が11品からなる5000円のおまかせコースのみなら、ワインや紹興酒も一律、ボトル1本2900円という良心的な価格設定なのだ。

「この辺りは個性的な飲食店がひしめくエリアなので、一番リーズナブルな中国料理店を目指し、どんなに食べて飲んでも1万円以内に収まるようにしました」

左党には嬉しい限りで、心なしか酒が進む。コースに必ず登場する四川省自貢(じこう)市の名物「鉢鉢鶏」は、つまみにちょうど良い。スパイシーな甘辛いタレが、厚切りの鶏モモ肉に染みている。

「鶏をさまざまなスパイスで煮た後、そこに生姜やニンニク、ラー油を加えてソースを作ります。このソースはウナギのタレのように継ぎ足すことで美味しさが増していくので、定番でお出ししています」

 中国の鄙にも稀な美味に、やみつきだ。



©MEGUMI KOMATSU

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