銀座 ふじやま
- 小松めぐみ
- 2019年5月19日
- 読了時間: 3分
東京都中央区銀座3-3-6銀座モリタビル 7F
☎︎03-6263-2435 営業時間17:00~24:00
不定休 コース予算:¥30,000(税サ別)

料理人も水も食材も京都から
料亭の粋と野趣が交わる京料理
京都の名店で腕を鳴らした藤山貴朗氏(46)が、3月下旬、東京・銀座に進出。自身の名を冠した日本料理店「銀座ふじやま」をオープンした。
藤山氏は24歳で地元・京都の名店「和久傳」に入り、3年で早くも料理長になった腕の持ち主。
「料亭文化をのぞいてみたくて『和久傳』の門を叩き、しつらえから感性の行き届かせ方まで勉強させてもらいました」という藤山氏の店は、ビルの中にありながらも料亭のような趣だ。カウンターと個室2室の16席から成る店の内装は、京都から呼び寄せた数奇屋大工が手がけたという。
聚楽壁に囲まれた席に着き、京都・伏見の酒「抱腹絶倒」のお酌を受けて始まるコースは、3万円(税サ別)のおまかせ1種類。約11品のコースは、懐石料理の流れを汲むため、飯蒸しや寿司など、お米を使った一品から始まる。食材は伊勢や明石から、水は京都の酒蔵から仕入れているものだ。
「東京に来てすぐの頃に浄水器を通した水で出汁をひいてみたのですが、どうもしっくりこなくて、酒蔵の仕込み水を分けてもらうことにしました。食材も以前からお付き合いのある業者さんから仕入れていますので、京都にいた時と同じ感覚で料理しています」と、藤山氏。作り手も材料も京都からやって来ているとあって、料理ははんなりと上品。コースの中にはさりげなく山菜が使われているため、そこはかとなく里山の風情が漂うのも特徴だ。
たとえば前菜は、新鮮な毛蟹に萱草(かんぞう)という山菜と酢取りみょうが、土佐酢を合わせたもの。ほのかな甘みとぬめりを持つ萱草は、毛蟹の繊細な甘みを引き立てる名脇役だ。煮物椀では、大きな蛤と美山直送の湯葉の柔らかな味わいに、春の山菜“花カタクリ”が野趣を添えている。
藤山氏が通算20年間勤めた「和久傳」のルーツは、京都府北部の海と山に囲まれた丹後地方。その土地の自然が、藤山氏のフィルターを通して皿の上に表現されているのだろう。
コースの前半は、端正で伝統的な料理が主体。お造り、八寸、木の芽味噌を添えた筍の炭火焼きやタラノメの天ぷらなどは奇をてらったところがなく、季節を愛で味わうことに集中できる。
一方、後半にはキャビアをのせた“ヤーコン麺”や、高森和牛と花山椒とクレソンの鍋など、西洋の食材や創意工夫を取り入れた品々が登場。炊きたての京丹後米の土鍋ご飯に、鯖のへしこや香の物と共に出される「鮑と自然薯のペースト」は、ご飯にかけてとろろご飯のように楽しむこともできる。
「今後は東京近郊の漁港や畑を回って、新しい食材も取り入れていきたい」という藤山氏。今後の進化を見届けていきたい新店だ。
©MEGUMI KOMATSU
次回は「週刊新潮」23号にて、「匠 鮨おわな」の記事をお届けします
Comments