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銀座 やまの辺 江戸中華

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年4月30日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都中央区銀座8-4-21保坂ビルB1 ☎︎03-3569-2520

営業時間16:30〜22:00LO    

定休日:日曜・祝日(不定休あり) 

予算:コース¥10,800〜

*2015年「週刊新潮」49号掲載



 中華料理は「上海」「北京」「広東」「四川」の4つに分けられるが、今年(2015年)8月、東京・銀座にオープンしたのは、いずれとも違う「江戸」。その名も「銀座やまの辺江戸中華」である。

 日本、とりわけ江戸前の食材をふんだんに使った中華料理というコンセプトが注目を集め、4ヵ月経った今も連日、満員御礼の賑わいを見せている。

「中国人ではなく、日本人の感性でつくる中華料理店を開きたかったんです。今や中華料理は、日本人の多くが子どもの頃から親しんでいる国民食ですからね」

 と、オーナーシェフの山野辺仁氏が言う。

「私は銀座の老舗中華料理店に長年、勤めていたのですが、中国と日本では季節感が違います。日本には、冬の白子やノドグロなど、中国では使わないけれど美味しい季節の食材がたくさんある。そういったものを使うことで、日本の四季を感じられるような中華料理に仕上げています」

 メニューは10品前後から成る1万800円のおまかせコースのみ。席に着くと、目の前に絢爛豪華な金彩の九谷焼の皿が、折敷のように置かれている。

その上に、小さな前菜が置かれて、コースがスタートした。1品目は中華風葱ソースが添えられた「ヒゲダラの昆布〆葱ソース」で、2品目は「牡蠣の湯引きサラダ」。細く切った春巻の皮をのせるなど、中華風のアクセントが利いて、紹興酒が進む。

 より紹興酒の香りが楽しめるようにと、ワイングラスでいただくのも、この店の特徴だ。

 続いて登場したのは、炊きたてのふっくらしたごはんに醤油味のフカヒレの煮込みをのせた「吉切鮫のフカヒレのミニ丼」。筋の1本1本が太く、贅沢な気分が盛り上がる。

「このお米は、契約している千葉の農家で、私たちが田植えをして収穫したものなのです。コースの初めに土鍋で炊いたごはんをお出しするのは、茶懐石に着想を得ました」

 続く4品目のお椀も、いわば「和中折衷」。鶏ガラや金華ハムからとった上湯スープの湯気と香りが「中華」を思わせる一方で、具材に使われているセリ、白子、九条葱といった日本の冬の味覚が「和」と「季節感」を感じさせる。

 これに「佐島の煮蛸」、「上海蟹の春巻」、「焼売」、「赤ムツと葱の香り蒸し」と続き、9品目は「よだれ牛」。よだれが出るほど美味しいことから「よだれ鶏」という名を持つ「四川」の鶏料理を、黒毛和牛を使ってアレンジしたものだ。炭火でじっくり焼いたイチボは和牛特有の風味が豊かで、醤油や香辛料や胡麻で作られた濃厚なタレがよく合う。下に敷かれた細切りのピーマンの塩炒めと共に食せば、青椒肉絲のようでもある。

「江戸中華」というコンセプトこそ個性的だが、その味わいは控えめで奥ゆかしい。なるほど、実に日本的な中華料理である。


©MEGUMI KOMATSU

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