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銀座 本店浜作(銀座)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年5月30日
  • 読了時間: 3分

東京都中央区銀座7-7-4   ☎03-3571-2031

営業時間11:30〜13:00LO、17:00〜21:00LO  定休日:日曜・祝日 

鯛茶コース(昼のみ)¥5,400、おまかせコース¥22,680~ http://www.hamasaku.co.jp

*2016年「週刊新潮」21号掲載



 5月下旬は、オコゼやカレイが美味しい時節。この旬の魚を味わうなら、「本店浜作」だ。実は元祖カウンター割烹の店である。

「大正13年に大坂で創業したのですが、財界人の常連客に東京出店を促されて昭和3年に銀座に移り、その際にオープンキッチンを作ったのです。当時は調理場が丸見えの店などなかったため、大工さんにも大家さんにも反対されたそうですが、いざ開業すると物珍しさからすぐに評判になったと聞いています」

 カウンターの中で語るのは、3代目の塩見彰英氏(68)。その奥の広い板場では、板前さんたちが客の注文をテキパキとこなしている。最近は日本料理店もコースが主流になってきたが、ここでは今も単品で注文する客がほとんどなのだ。

 付き出しは、ハモのすり身で作った魚そうめんと生ウニ。さあ、どうしよう。

「お造りを召し上がるなら、今日はオコゼの他に、車海老、マコガレイ、アオリイカ、ハモもいいですよ」

 黒い漆地の「色板」に朱墨で書かれた古風なお品書きには値段がないが、お造りの盛り合わせは5400円(税込、以下同)。注文すると、早速ご主人がオコゼの身をひいてくれた。

薄造りのオコゼの透き通った身はなめらかで、淡白かつ上品な旨みはフグのよう。そこに添えられた湯引きした肝は、アンキモのような濃厚なコクがある。同じく目の前で引かれたマコガレイは歯ごたえのよい身にしっかりと旨みをたたえ、イカも車海老も鮮度抜群。ハモの落としを梅肉につければ、ここが関西割烹であることを思い出す。

「ハモもオコゼも、本来は西日本の魚。オコゼは夏の季語でもありますが、実は1年中獲れるので、ウチでは関西の魚として、通年お出ししています」

薄造りは、オコゼの甘味が最もよくわかる料理ですね」

 続いて登場したのは、オコゼのカマの唐揚げと、車海老の頭を焼いたもの。お造りにした魚は、カマや頭もこうして料理してくれるのだ。オコゼのカマは唐揚げにすることで皮や身のゼラチン質がとろけてもっちりとし、至福の味わい。車海老の頭に詰まったミソは、わずかな量だが濃厚で、酒肴にうってつけである。

 2品目は「カレイの煮おろし」(5400円)。初代の頃から続く名物で、メイタガレイを丸ごと1尾唐揚げにし、大根おろしとダシ、醤油、レモンを少しふったものである。揚げ物なのに油気を感じさせないのは、大量の大根おろしがのせられているため。ふわりとした身の旨みは淡白だが、縁側の小骨の周りの身は旨みが濃く、つい小骨から身をとることに集中してしまう。

「祖父から受け継いでいるポリシーは、一番いいものを仕入れ、その日のうちに使い切ること。50年の付き合いの仲買から仕入れる魚介は旬の最高のものですので、なるべく手を加えないように心がけています」

 関西割烹の心意気、ここにあり。


©MEGUMI KOMATSU

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