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銀座 朱雀(銀座)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年4月2日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月25日

東京都中央区銀座5-5-9 オージオ銀座ビル5F   ☎03-3573-7577 

営業時間11:30~14:00、18:00~24:00    定休日:月曜(臨時休業あり) 

予算:昼¥5,400〜、夜¥10,800〜  *2015年「週刊新潮」16号掲載



 焼き胡麻豆腐に卯の花、金平牛蒡に鯛茶漬け。本格的な割烹料理屋なのに、我が家に帰って来たかのような温かさを感じる。

 東京・銀座5丁目に店を構えて7年目の「銀座 朱雀」は、そんな店である。雑居ビルのエレベーターで6階へ上がると、扉が開くと同時に店名の書かれた額が目に入る。名付け親である茨城県の古刹・西福寺の住職の墨跡だという。

「料理屋は火を扱う所ということで、火の神様である『朱雀』の名前を授けていただきました」

 朗らかに語る店主の山西和文氏(38)は、ミシュラン1ツ星の「銀座うち山」で修業後、赤坂の名店「割烹津やま」で5年ほど板長を務め、2009年に独立した。瞬く間に人気店へと成長した秘訣は、山西氏が十八番にしている冒頭の4品にある。

「コースの内容は日替わりですが、お客様に『帰ってきた』という感覚を持っていただきたくて、この4品は定番として必ずお出ししています。焼き胡麻豆腐と鯛茶漬けは『銀座うち山』で教わったもので、卯の花と金平牛蒡は『割烹津やま』の味。僕は修先で教わったことを守っているだけなんですよ」

 謙虚な店主に恐縮しながら1万6200円のコースを注文すると、さっそく桧のカウンターに焼き胡麻豆腐の小皿が出された。

「胡麻と蕨粉、葛粉、豆乳を練って胡麻豆腐をつくり、表面に片栗粉を打って焼いています」

 表面は香ばしく、中はもっちりとしてなめらか。ごまソースは濃厚で、一度食べたら忘れられない。

 続いて、季節の野菜や魚介を使った冷たい小鉢が2品と、タラノ芽やウドの芽などの天ぷらが登場。旬の山菜の香りを味わっていると、厨房から若いスタッフが分厚く切ったマグロの串刺しを持って現れ、焼き場で炙り始めた。山西氏はその隣で刺身を引いている。

 5品目は、何とも豪華な刺身の盛り合わせで、

「僕自身が同じ種類の魚を何切れも食べたくないので、一切れずつ色んな種類をお出ししています」

 という店主の粋な計らいによって、平目、金目鯛、鯛の昆布〆、車海老、マグロと鰹と鯖の炙ったもの、生の白イカ、河豚の煮こごりの9種が盛られている。炙りマグロと車海老は黄身醤油で味わう趣向だ。

 次の「鯛の骨蒸し」で旨みの溢れる出汁を満喫すると、いよいよ〆の番。「鯛茶漬け」と、卯の花と金平牛蒡を添えた「太刀魚と椎茸の挟み焼き」が登場。まるで定食のようだ。

 卯の花はきめ細かくしっとりとした口当たりで、太めの金平牛蒡は歯応えが絶妙。鯛茶漬けはというと、

「お茶漬けにする前に、まずは胡麻だれで和えた鯛をそのままご飯にのせてお召し上がりください」

 とのお達し通り、2段階で味わった。最初は濃厚な胡麻だれとプリッとした鯛の食感が美味で、煎茶をかけると胡麻の風味が柔らかくなる。なるほど、この〆は、確かに「食べに帰りたい」味である。



©MEGUMI KOMATSU

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