top of page

銀座 涵梅舫(銀座)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年4月25日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月25日

東京都中央区銀座2-4-6 ベルビア館8F   ☎︎03-3566-8078

営業時間11:30~14:30LO、17:30~22:30LO 無休 

予算:ランチ¥1,080〜、コース¥6,480〜 http://kanmeihou.co.jp

*2016年「週刊新潮」44号掲載



医食同源「極上スープ」の「宮廷風フカヒレの姿煮込み」


「芸人は歌声で戦い、厨師は湯で戦う」とは、中国に伝わる諺。「湯」はスープのことで、日本料理のダシと同様、中国料理の命である。

 とりわけ「フカヒレの姿煮込み」は、湯がものを言う。フカヒレ自体には味がないため、いかに湯の旨味を吸収させるかが肝要なのだ。が、北京の宮廷料理を看板とする東京・銀座「涵梅舫」のそれは、単に美味しいだけではない。

「宮廷料理は貴人が食べる、ものなので、美味しいのは当たり前。そのうえで、健康にもよくなければなりません」

 こう説く店主の張慶余氏(64)は、1980年代に留学生として来日し、中国から一流の調理師を招いて、17年前に赤坂で開業。そして昨年、銀座に移転した。

「よくフカヒレの姿煮込みに使われるのは『上湯(しゃんたん)』という澄んだスープなのですが、当店では宮廷料理の伝統に則って『奶湯(ないたん)』と呼ばれる白濁したスープで煮込みます。まず、アヒル、丸鶏、干し貝柱、金華ハム、豚スネ肉を鍋で4時間煮込み、そこに鶏の挽肉を加えて弱火で煮て漉し、『清湯』をつくります。この鍋から液体の3分の1を取り出して強火で煮出すと、材料のゼラチン質が溶け出て白濁する。これが『奶湯』で、人間の体に必要な多種のアミノ酸やカルシウム、コラーゲンをたっぷり含んでいるんですよ」

 そんな医食同源の「宮廷風フカヒレ姿煮」は、アラカルト(50㌘3500円〜)でもコースでも楽しめる名物料理。今回は1万800円の全10品のコースを注文したところ、前菜とスープに続き、3品目に登場した。

 見た目がラーメンのトンコツスープを思わせる奶湯は、とろりとした柔らかな口当たり。喉から鼻に抜ける香りは芳醇で、旨味の凝縮感が圧倒的だ。フカヒレはなめらかな口当たりとプリッとした歯応えがよく、一口ごとに疲れが取れてゆく気がする。

「『奶湯』だけでなく、フカヒレも体に良いのです。100㌘中83.5㌘がタンパク質という低脂肪食材で、全身の細胞を補強して老化を防ぐ、コンドロイチン硫酸が豊富に含まれているんですよ」

 低脂肪・高タンパク質なのは、5品目の「鹿肉の黒胡椒炒め」も然り。鹿の細切り肉をピーマンやタマネギ、黒胡椒と共に炒めたもので、清朝の康煕帝の大好物だったという。

次の「椎茸揚げ餡かけ」は精進料理の一種。同じく清朝の西太后が、月に1度の「菜食の日」を設けた際に生まれたもので、椎茸が免疫力を高めてくれる。

 〆の「揚州炒飯」は、再び「湯」がものを言う。五目炒飯の原型といえる料理で、ナマコや干し貝柱、川海老、卵など11種の具材が調和し、どことなく懐かしくも上品な味わいなのだが、

「隠し味として『清湯』と『奶湯』の2つの湯で味付けをしています。こうすることで、具材の旨味が引き立つんですよ」

 降参である。



©MEGUMI KOMATSU

Comments


SUBSCRIBE VIA EMAIL

© 2023 by Salt & Pepper. Proudly created with Wix.com

bottom of page