青山 はしづめ(表参道)
- 小松めぐみ
- 2018年4月13日
- 読了時間: 3分
更新日:2018年8月23日
東京都港区南青山3-10-34 2F
☎︎03-3478-3520
営業時間:18:00~21:00LO
定休日:日曜、祝日 予算¥10,800〜
http://hsmen.com/index_3.html
*2015年「週刊新潮」32号掲載

製麺会社が手掛ける「日本的」四川料理
「中国で食べるよりも美味しい」――。中国人客をして、そう言わしめる四川料理店が、東京・表参道にある。2015年5月、製麺業界の老舗「橋爪製麺」が開業した「青山はしづめ」だ。その本場をも凌ぐという味の秘訣を探りに伺った。
青山通りの路地裏に佇む古民家の扉を開け、木製の階段を上ると、左手にカウンター、右手と後方に計4卓のテーブルが置かれた「和」の空間が現れる。
「今後、増える外国人客を意識して、日本的な魅力を訴求しています」
と、橋爪利幸社長(46)が胸を張る。
「うちはずっとホテルや中国料理店に中華麺を卸してきたのですが、創業63周年を迎えた2012年を機に裏方から表舞台に出ようと思い、東京・広尾に和風だしを使用した中華料理店を開きました。その2号店に当たる当店では、四川料理に和食のエッセンスを加えているんですよ」
たとえば、1万6200円のコースの先付は「ザーサイと胡瓜の和え物」で、隠し味に秋田の漬物「いぶりがっこ」を使った和洋折衷の味わいだ。
名店「四川飯店」で20年研鑽を積んだ初見直人料理長(42)が、心がけを教えてくれた。
「当店では、食材はもとより、味付けにも“和”を取り入れています。鶏からとる中華出汁だけでなく、カツオや昆布、煮干でとった和風出汁で旨味を出すこともあれば、醤油や米酢といった日本の調味料を使うこともある」
その最たる例が、中国人客から冒頭の一言を引き出した7品目の「獅子の頭に見立てた肉団子」だ。中国では祝いの席に出される料理で、豚の挽肉の肉団子を中華出汁で煮る。が、初見氏は豚の塊肉を1時間かけて包丁で叩くことでよりふわりとした口当たりを実現し、中華と和風の混合出汁で煮ている。
続く「フカヒレの姿ステーキ」でも、タラバ蟹の内子をたっぷり使ったソースに和風出汁が効いて、上品な味に仕上がっている。この穏やかな味は、本場では出会えない旨味であろう。
9品堪能したところで、コースの締めが登場した。もちろん麺料理、「海老香る香港焼きそば」だ。
「開業に際して最後まで悩んだのが、締めの料理に使う麺でした。何せ当社は、年に100種類もの麺を開発していますからね」
と、橋爪社長が苦笑する。「ただ、麺は同じグラム数でも、太いものより細いものの方がサクッと食べられるので、満腹に近づいている締めには極細麺が理想的。そこで今年の春、特別な卵を練り込んだ素麺ほどの極細麺を開発し、これを採用することにしたんです」
パリパリの焼きそばを箸で持ち上げると、湯気と共に海老の粉末の香ばしい香りが立ち上がり、細い麺によく絡む。初見氏曰く、
「師匠の『熱いものは熱く、冷たいものは冷たく』という教えを守っているだけですよ」
その奥ゆかしさもまた、日本的である。
©MEGUMI KOMATSU
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