鮨あらい(銀座)
- 小松めぐみ
- 2018年7月19日
- 読了時間: 3分
更新日:2018年8月23日
東京都中央区銀座8-10-2
☎03-6264-5855
営業時間12:00〜13:30、17:00〜23:00(2回転制)
定休日:水曜、祝日の月曜
予算:昼¥8,640〜、夜¥27,000〜(税込)
*2017年8月23日発売「週刊新潮」33号掲載

年内は予約で満席
若き大将が握る江戸前鮨の人気店
銀座の新築ビルに2015年10月に「鮨あらい」を開業した新井祐一氏(35歳)は、気鋭の若手鮨職人。店は独立の翌年にミシュランガイド東京の1ツ星を獲り、現在は年末まで予約で満席という程の人気ぶりだ。
「まれにキャンセルが出ることもあるんですがね。年明けの予約は10月からお受けする予定です」
そう語る口調は控えめだが、客を迎える時は一変。よく通る声を「いらっしゃい」と響かせ、粋な空気を醸し出す。
木曽檜のカウンターはわずか7席。その前に木製の冷蔵庫と木札が並ぶ光景は、まるで昭和の鮨屋のようだ。
「ちょっと懐かしい感じを出したかったので細部にこだわりました」
そんな新井氏の鮨も、どこか懐かしい正統派。2万7000円(税込)のおまかせコースには、つまみと鮨が計約23品登場する。
前半は旬の魚介を生かしたつまみで、芝海老のあんをかけたトロ茄子(白茄子)など、心和む温かい料理も色々。たとえば焼き立ての穴子と刻んだきゅうりを土佐酢や大根おろしで和えた「穴子の白焼き」は、穴子の旨みをさっぱりと楽しめる一品。
「鰹のタタキ」にはニンニクを使わず、代わりに浅葱の繊維を潰して香りを出すなど、心憎い工夫も散りばめられている。
「銀座で開業するのが、長年の私の夢でした。ここは鮨激戦区ですから、一切手抜きはしません」
そんな気概で仕入れる魚は、もちろん最良のもの。なかでも新井氏がこだわるのは、マグロの質だ。
「マグロは信頼する仲卸の『やま幸』にお任せして仕入れていまして、今日のは大間の199㌔。マグロの握りは最低でも4カンはお出しします」
丁寧に切り付けられた赤身のヅケやトロは、赤酢の酢飯と抜群の相性。酢飯によって赤身は香りが引き立ち、トロは脂がほどよくキレるという具合だ。同じトロでも、背側と腹側の部位を食べ比べて微妙な味の差を楽しめるのは、この酢飯あってのことだろう。
「酢飯は富山産コシヒカリを数種の赤酢と米酢で味付けしたものです。酢のブレンドは常に進化させています」
日夜研究に余念がない新井氏だが、酢飯以上に進化が目覚ましいのは〆の玉子焼だ。仕込みに1時間半、焼くのに2時間を要する玉子焼は、甘く柔らかく、半熟カステラのよう。彼が独立前に修業した名店『久兵衛』とも『すし匠』とも違う、独自の玉子焼である。
「修業先の流儀を受け継ぐだけでお客さんに通ってっもらえるとは思えませんから。自分の感性を生かしていきたいと思っています」
そんな大将が作り出す江戸前の雰囲気も、客を惹き付ける魅力となっている。
©MEGUMI KOMATSU
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