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西麻布大竹(西麻布)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年8月8日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月23日

東京都港区西麻布1-4-23 コア西麻布1F  ☎03-6459-2833

営業時間 18:00〜22:00LO  

定休日:日曜日  

コース予算:¥15,000(税別)

*2018年4月25日発売「週刊新潮」17号掲載

岐阜の名店を経て都心で開業

30代店主の隠れ家的会席料理店


 港区西麻布の静かな路地に2017年12月に開業した「西麻布大竹」は、カウンターと個室1室から成る全12席の会席料理店。店主の大竹達也氏(36)は、岐阜県の有名日本料理店「たか田八祥」で10年間修業した後、支店2軒の店長として6年間活躍した料理人だ。

「以前から『独立する時は東京で』と考えていましたので、居抜きで炭火が使える理想の物件が西麻布に見つかり、開業を決意しました。緑が多くて静かな環境も気に入りまして」

 カウンター席に座れば、奥の壁の小窓越しに厨房の炭火が見え、自ずと意識が料理に向かい始める。

 おまかせの会席コース(1万5000円、税別)は、月替わりの10品構成。旬の愛知県産フルーツトマトと車海老の酒煎りを新玉葱のドレッシングで和えた先付はモダンなテイストだが、続く「毛蟹の真丈椀」や「おこぜのお造り」はクラシックな正統派だ。

 たとえば蓋を開けた瞬間に湯気と出汁の香りが立ち上る「毛蟹の真丈椀」は、椀づまのうるいや木の芽の彩りも美しく、すっきりと端正な趣。蟹真丈の中には蟹味噌が包まれており、食べ進むうちに出汁の旨みと蟹の甘みが重なってゆく。

「このお椀は蟹の甘みが強いので、出汁をとる時は鰹節ではなく、鮪節と道南真昆布を使っています」 

 椀種の素材に合わせて出汁のとり方を調整するような丁寧さは、5品目の名物「じゃがいものハリハリ」にも顕著。大竹氏が修業先から受け継いだこの品は、膾(なます)のように細く切ったじゃがいもと飛び子を和えたシンプルな料理だが、じゃがいものシャリッとした歯触りと素朴な甘みが生きた非凡な逸品。じゃがいもは太白胡麻油で炒められているが、さらりとしていて全く油気を感じないほどだ。美味しく作るコツを尋ねれば、

「まず、男爵芋を使うことと。そして炒める前に徹底的に水切りするのがポイントです」

 と、大竹氏。

 コースの中盤には炭火で焼いた「黒ムツの一夜干し」や、潮の香りと旨みが凝縮した「自家製の海鼠子*(このこ)」などのシンプルな品が挟まれ、後半には季節のクリームコロッケや肉料理が登場する。たとえば「帆立とアスパラガスのクリームコロッケ」は、まろやかなクリームに帆立の旨みが溢れ、極上の洋食のようだ。

「天ぷらは天ぷら屋さんには勝てないのでコロッケにしたということもありますが、洋の要素や肉料理を取り入れているのは、修業先の影響です。若い頃『たか田八祥』で修業させていただいたのも、日本料理の枠に囚われないスタイルが好きだったからなんです」

 肉料理には季節に応じて飛騨牛や猪、鴨などが使われ、4月は「飛騨牛と花山椒の鍋」。〆の食事には分厚い鱒の幽庵焼をほぐして混ぜた山菜ご飯が供され、春の山海の幸を堪能できる。

©MEGUMI KOMATSU


(2018年8月追記)

*海鼠子=なまこの卵巣を干したもの

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