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久丹(新富町)

  • 執筆者の写真: 小松めぐみ
    小松めぐみ
  • 2018年8月12日
  • 読了時間: 3分

更新日:2018年8月22日

東京都中央区新富町2-5-5 新富MSビル1F   ☎03-5543-0335

営業時間: 17:30〜 

定休日:日曜日、祝日 

コース予算:¥23,000~(税サ別) 

*2018年6月28日発売「週刊新潮」25号掲載 


旬の味覚をストレートに生かす             “3ツ星”店仕込みの日本料理

 東京・新富町に2018年4月7日に開業した日本料理店「久丹(くたん)」の店名は、店主の中島功太郎氏(39)の想いを込めた造語。いわく、

「久という漢字には永遠にという意味があり、丹には赤、そして真心という意味があります。赤は情熱を表す色ですので、料理への真心と情熱、そして店が長く続くようにと考えました」

 看板のロゴは、長寿のシンボルの鶴。自分の代で終わらないよう、他人が継いでも抵抗がないように名前を使うことを避けたという。

 気宇壮大な計画を持って独立した中島氏の経歴は、世界を股にかけて華やか。地元福岡の生簀割烹を経て24歳で渡米し、ノブ松久氏率いる「Matsuhisa」で研鑽を積んでいた彼は「日本人なのになぜ鮨が握れない?」とお客に言われ、帰国後は渋谷の鮨店「秋月」で修業。そこで声をかけられ、後にミシュラン3ツ星を獲得した日本料理店「かんだ」で10年半修業した。

 そうした一流店で磨いたもてなしのセンスは、店全体に生かされており、店内はウェイティングスペースを介して個室1室と7席のカウンター席を設けた、贅沢な造り。設計は京都の工務店が手がけたとか。

「コース2万3000円(税サ別)の価格帯に見合う空間を作りたかったので、数寄屋建築で名高い中村外二工務店の孫弟子の方に設計してもらいました」

 入念に整えられた舞台で供されるコースの品数は、約12品。例えば初夏の先附は広島産じゅんさいのツルッとした食感を生かしたもので、2品目はもち米の粉を付けて揚げたメヒカリの唐揚げ。3品目から数品続くお造りはいずれも迫力満点で、ねっとりと甘いアオリイカの黄身和えにキャビアがのせられ、蒸し鮑は3切れたっぷり。冬の河豚に相当する夏の高級魚、虎魚のお造りは、ゼラチン質の身に淡白な旨味が溢れる。



「敢えて盛り合わせないのは、集中力が散漫になってしまうため。お椀と刺身は日本料理の華ですので、ストレートに出したいんです」

 と中島氏。そして削りたての枕崎産の鰹節を一片差し出して味見を勧め、

「これから出汁を引いてお椀をご用意致します」

と、厨房へ。「アイナメの葛打ち椀」の出汁は香り高く、アイナメはふわりとした食感が鮮度のよさを物語る。

 コースの内容は随時替わるが、お椀の後の手巻き寿司は通年の定番。脂ののったマグロの突先と酢飯、有明海苔の香りが一体となった逸品だ。夏は活け鮎の炭火焼も定番で、8月末まで楽しめる。

「前店の『かんだ』では、夏は鮎を焼く係でした。8年間担当したので、鮎を焼くのは得意なんですよ」

 という通り、鮎の焼き加減は、頭や皮は香ばしく、身はしっとりとして絶妙。おこぜの唐揚げや焼きスッポンも力強い旨味に溢れ、次世代に伝えたい美味揃いだ。


©MEGUMI KOMATSU

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